ENGINE
ジープ用エンジンには妥協が許されない

三菱ジープ用エンジンの源流はMB/GPWから派生

 ジープに要求されるエンジン性能は、一般的な乗用車に求められている性能とは異なる。高トルク、好レスポンス、耐久性、低燃費、軽量、コンパクト、整備性の良さ、はたまた粗悪燃料でも走る耐用性・・・など、全てを高次元でバランスされたものでなくてはならない。なぜならば、ジープは過酷な環境下での使用が目的で作られてきた経緯があるからだ。

 三菱ジープのエンジンは、米国のウイリスオーバーランド社からCKD(ノックダウン生産)のために供給されたL4(ゴーデビル)型エンジンから端を発している。当時ゴーデビルエンジンと言えば、米国の持つあらゆる技術を駆使して完成されたエンジンである。そしてこの後継機種であるH4(ハリケーン)型エンジンを、国内生産するにあたってJH4(ジャパンハリケーン)型と名付けられた。このエンジンも、当時は前記した性能を高次元でクリアした高性能なエンジンだった。後にこのJH4型エンジンは、ジープ用ディーゼルエンジンのベースとなっていくこととなる。

ジープ用ディーゼルエンジンは、日本製JH4型エンジンから生まれた

 時勢は経済性に優れたディーゼルエンジンを求めた。そしてJH4型エンジン1号機完成から僅か3年半後の1958(昭和33)年には、JH4型エンジンをベースとしたKE31型ディーゼルエンジン搭載車が発売されることになった。KE31型エンジンはパワー面で若干ガソリンエンジンに劣るものの、実用域においては優劣を感じさせず、軽油を使用できることの方にメリットが感じられた。そして、KE31型エンジンは我が国初の小型高速ディーゼルエンジンとして、発売翌年に自動車技術会の技術賞を受賞した。しかし発売から12年後、高速化した交通事情に対応するべく、新エンジン4DR5型に切り替えられることになった。

 4DR5型ディーゼルエンジンは、1970(昭和45)年ジープに搭載されて発売された。総排気量2,659cc、渦流室式燃焼室を持つ4DR5型は、80PS(昭和47年までは75PS)を発生し、最大トルク18kgm(昭和47年までは16.5kgm)と、小型ディーゼルらしからぬ性能を誇っていた。このディーゼルエンジンは、1985(昭和60)年の騒音規制が施行されるまでの12年間ジープに採用されていたが、さらにパワーアップと静粛性が実現した4DR6型の登場によって、ジープから降ろされることになった。しかし、後にこの4DR5型エンジンはジープの存続を賭け、復活することになるのだ。

 4DR5型をベースとして渦流式燃焼室から直噴式に変更し、ターボチャージャーや高性能噴射ポンプを装着した4DR6型エンジンは、最高94PS、最大トルク21kgmを実現した。このパワーアップ以外にも、オイルクーラーの装備、マフラー容量増量など細部にわたって改良が施された。また騒音規制に適合させるための、吸気レゾネーターやサーモタイプのオートクールファンも同時に装着されている。この4DR6型が搭載されたJ53は、レスポンスのいいエンジンと低速トルクを活かした走りができるということで、アンチディーゼル派のユーザーからも支持された。

J55には最後のジープに相応しい高耐久、高性能エンジンが採用された

4DR6 充分な動力性能と経済性を満たした4DR6型だったが、平成5年排出ガス規制と自動車NOx総量規制法の条件を満たせず、新エンジンが開発されることになった。そのエンジンこそ、ジープ最終生産記念車にも搭載されている4DR5型エンジンであり、2世代前に採用されていたエンジンでもあるのだ。

 4DR5型エンジンが再び採用されたことで、燃焼室は直噴式から渦流室式に戻った。しかし厳しい規制をクリアできるものの、ターボチャージャーを装着してもパワーダウンは避けられない。そこで三菱が選択したのは、燃料噴射量を増量し、上昇する排気温度を下げるためのインタークーラー、大容量ラジエターの採用である(インタークーラーの装着によって、車内のクーラーが装備できなくなってしまったのは残念だが)。また4DR5型と言えども、4DR6型で培ったパーツが細部にわたり使用されているので、強度、耐久性などは格段に向上している。

 J55に搭載された4DR5型は、特に複雑な機構を持たされていないため、耐久性も確保されている。三菱ジープ最後のエンジンとなった4DR5型エンジンは、最終生産限定車に施される高耐久ボディーと相まって、きっと後世まで生き残るエンジンになると信じている。

エンジン


 
 
 

総排気量 cc
2,659
シリンダー数及び配置 直列4気筒
燃焼室形式 渦流室式
吸排気弁数(気筒あたり) 各1
弁機構 OHVギア駆動
内径×行程 mm
92×100
圧縮比 21.5
最高出力(ネット) PS/rpm
100/3,300
最大トルク(ネット) kgf/rpm
22.5/2,000
燃料消費率 g/PSh-rpm
170/2,000
バルブタイミング 吸気 開き BTDC18゜
閉じ ABDC50゜
排気 開き BBDC54゜
閉じ ATDC14゜
過給機形式 ターボ式
給気冷却方式 空冷式
インジェクションポンプ形式 分配形





項目 標準値 限度値
バルブクリアランス(冷態時) mm
0.3
噴射時期(ダイヤルゲージの指示値) mm
5゜ATDC(1±0.03)
アイドル回転数 rpm
800±50
圧縮圧力 kg/cm2(170rpm時)
30 20
気筒間圧力差 kg/cm2
最大3


エンジン関連部品

インタークーラー
フロントグリル(ラジエターガード)とラジエターの間には、デンソー製のインタークーラーが装着されている。排気流を利用したターボチャージャーによって熱せられた吸気は、高温になるほど膨張し、シリンダー内に送られるエアの酸素量も減少してしまう。このインタークーラーは膨張したエアを冷却して、シリンダー内に充分なエアを供給させる役目を果たす。前モデルのJ53が直噴式ターボチャージャーで94PSを発揮するのに対し、渦流式にもかかわらず100PSにパワーアップを実現させた立役者でもある。

ラジエターグリル・ライナー
ボンネットフードとラジエターグリルの接触部分には、帆布製のライナーが用いられている。ボディーに固定されているフードとフレーム固定のグリルは、お互いに違った振動を発生するが、そのズレを逃がす役目を担っている。この時代になぜ帆布を?と思ってしまうが、ラバー製だと耐久性に劣り、振動を逃がせないからだ。

ターボチャージャー
ターボチャージャーのタービンは、三菱重工業製のTD04型ウエストゲート付きが採用されている。装着位置がクラッチのマスターシリンダーに近いため、タービンには遮熱板が取り付けられている。

インジェクションポンプ
燃料噴射量を増大してパワーアップを実現した分配型のインジェクション(噴射)ポンプ。排気温が上がりやすい渦流室式に燃料噴射量を増量すると、さらに排気温が上昇する。この問題は、インタークーラーと大容量ラジエターを採用したことで対策されている。またガバナーは、アクセル開度に応じて燃料が増量されるミニマムマキシマム・ガバナーだ。

エンジンマウント
エンジンマウントのインシュレーターは、ブッシュの振動を規制するストッパーで強化されている。またエンジンとフレームを接続するアース線は、エンジンマウントと共締めされる。

ルブリケーション
仕様 オイルクーラー形式 シェルアンドチューブ形
整備基準値 項目 標準値 限度値
油圧

kg/cm2
(油温70〜90゜C)

アイドル回転時 1.5以上 0.5
走行回転時 3〜5 2
給油脂 項目 銘柄 全容量 dm3(リットル)

オイルフィルター、
オイルクーラー油量 dm3(リットル)

エンジンオイル API分類CD級以上 約6.7(6.7) 約1.2(1.2)


フューエル
仕様 フューエルフィルター形式 カートリッジ(ろ紙式─水位警報装置付)
フューエルウォーマー最大出力 97.5W(バイメタル付き)
噴射時期 ATDC
5゜(プランジャーリフト1mm点)
アイドル回転数 r/min
800

インジェクション
ポンプ

型式 分配式
プランジャー径 mm
10
噴射順序 1 - 3 - 4 - 2
回転方向 駆動側から見て右
ガバナー 形式 遠心式
ブーストコンペンセーター あり
タイマー(噴射時期制御装置)形式 ハイドロリック
回転センサー あり
レバーポジションセンサー あり
整備基準値 フューエルカットソレノイドバルブ コイル抵抗 Ω 11.6
噴射開始圧力 kPa{kgf/cm2
11,768{120}


フューエルサプライ エンジンコントロール
仕様
フューエルタンク容量 dm3{リットル}
45{45}
整備基準値
アクセルレーターペダルストローク mm
55±5
エンジンアイドル回転数 r/min
800
アクセルレーターケーブルの遊び mm
0〜1


クーリング
仕様 冷却ファン 形式 エンジン駆動式サーモ クラッチ付
ウォーターポンプ 形式 渦巻式
駆動方式 Vベルト駆動式
サーモスタット 形式 ワックスペレット式
開弁温度
82
ラジエーター 形式 コルゲート形
整備基準値 項目 標準値 限度値
ラジエターキャップの開弁圧力 kPa{kgf/cm2
74〜103{0.75〜1.05} 64{0.65}
サーモスタットの開弁温度
開弁時 82±1.5
全開時 95
サーモスタットのバルブリフト量 mm
8以上
冷却水(不凍液)の濃度 %
30〜60
給油脂 項目 銘柄 限容量 dm3{リットル}

冷却水容量
(含むコンデンスタンク内)

三菱純正ダイヤクイーン
スーパーロングライフクーラント

9.0{9.0}


エミッションコントロール
整備基準値
EGRソレノイドバルブNo.1及びNo.2抵抗(20℃のとき) Ω
115
回転センサー抵抗
1.3〜1.9
水温センサー抵抗
20℃のとき 3.2〜3.6
80℃のとき 0.3


グロー
整備基準値 プレグロー時間 12秒
アフターグロー時間 20秒
インジケーターランプ点灯時間 8秒
水温センサーの抵抗値 水温計接続側 70℃ 104±13.5Ω
90℃ (52Ω)
115℃ 23.8±2.5Ω

コントロールユニット
接続側

20℃ 3.25±0.33kΩ
60℃ (620Ω)
80℃ (300Ω)
グロープラグの常温抵抗 3.8Ω


充電装置
整備基準値 項目 標準値 限度値 備考
オルタネーター出力電流 A
公称出力電流の70% 公称出力:24V - 30A
ICレギュレーター調整電圧 V
28〜29 (エンジン回転:3,000r/min、5A以下)


バッテリー
仕様 形式 65D31R
電圧 V
12
容量(5時間率) Ah
59
電解液比重(20℃満充電状態) 1.280
整備基準値 項目 標準値 備考
バッテリー液の比重 1.220〜1.290 液温20℃


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